禁断の逢瀬から始まるはずだった一夜が、予想もしない恐怖と疑念の渦へと変貌していく――。
2019年公開のスリラー映画『ホステル ネクスト・レベル』は、スペインとイタリアの合作による英語作品で、クレア・フォラーニ、ジェイク・エイベル、そしてタイタス・ウェリヴァーが緊迫の心理戦を繰り広げる。
ホテルという密室を舞台に、不倫関係の男女が仕掛けられた罠に絡め取られていく物語は、愛情・裏切り・復讐が絡み合うサスペンスとしてじわじわと追い詰めてくる。静かな始まりから一転、誰もが加害者であり被害者になり得る緊張感が最後まで途切れない一本だ。
ホステル ネクスト・レベルの配信
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ホステル ネクスト・レベルのあらすじ
ホリーは成功した大学教授で、27歳の元教え子であり現在の恋人エヴァレット・アランと会うためにアスペンへ向かう。
彼女は用意されていたアイマスクをつけ、同じく置かれていた手錠を使ってベッドのヘッドボードに自分を繋ぐ。
その後部屋に入ってきた男が、警官である彼女の夫ラッセルだとは知らないまま、彼と性交する。
最初はそれを楽しんでいたが、行為が激しくなりすぎてもやめてほしいという彼女の訴えを無視して続け、ホリーは泣きながら終わる。
エヴァレットを疑うホリー
隣の部屋では、エヴァレットが拘束され口をふさがれている。ラッセルは、エヴァレットの妻リディアと娘ジェシカを人質にとっていると告げる。そして、ホリーに対して、先ほど彼女とセックスしたのは自分(エヴァレットが)だと嘘をつくように指示し、部屋を出る。
エヴァレットはホリーの手錠を外し、ホリーは着替えながら彼を激しく責め立てて帰ろうとするが、ラッセルがエヴァレットに電話をかけ、ホリーを帰らせないよう指示する。
さらにラッセルはホリーに電話し、エヴァレットは複数の女性失踪事件に関わる危険な男だと伝え、なんとかして逃げるよう懇願する。
その日一日、二人は電話越しに操られ、復讐のために互いを敵対させられる。
ホリーはベルボーイのデイブに「助けが必要」と書いたメモを渡すが、ラッセルに見つかり、罰としてリディアの切断された薬指をエヴァレットに送りつけられる。
ラッセルはエヴァレットに、部屋に置いてある薬を使ってホリーに睡眠薬を飲ませるよう助言するが、ホリーも自分の薬を使って逆にエヴァレットに薬を飲ませる。
エヴァレットは小声で、ホリーの夫ラッセルが自分の妻と娘を人質にしてこの状況を仕組んだのだと伝える。その後、二人は薬の効果で意識を失う。
ホリーが目を覚ますと、自分は部屋の手すりに手錠で繋がれており、エヴァレットを連続殺人犯だと非難し、ラッセルが警察を率いて止めに来ると警告する。
エヴァレットは寝室で、ラッセルが殴られて車椅子に縛り付けられているのを発見する。
エヴァレットはホリーを解放し、二人はラッセルが正体不明の薬物を注射されて死んでいくのを見届ける。
二人のうち一人だけがホテルを出て家庭へ戻ることを許される
変声された声の人物から電話がかかってきて、「二人のうち一人だけがホテルを出て家庭へ戻ることを許される」と最後通告を受ける。
ホリーはエヴァレットを刺して殺し、続いて電話で「その携帯を電子レンジで破壊しろ」と指示される。
すべての真相を知りたいなら513号室に来いと誘われ、そこへ向かうと、自分とエヴァレットの部屋を監視するシステムがあり、浴槽の中で目隠しをされ縛られた状態のリディアが、薬指を欠いたまま発見される。
リディアの関与
ホリーはリディアを解放し、エヴァレットが死の直前に隠していたメモリーカードの中身を確認し、リディアがこの計画に関与していたことを知る。
そこへリディアが現れ、エヴァレットの他の二人の愛人を殺したと告白し、メモリーカードを奪って破壊し、トイレに流してしまう。
ホリーはガラスの花瓶でリディアの頭部を殴り殺し、そこへ警備員二人が乱入してきて、彼女に投降を要求する。
ホステル ネクスト・レベルの感想
この物語は、ほとんどがホテルという閉ざされた空間の中で進行しながらも、電話や心理操作を通じて登場人物たちの関係が複雑に絡み合っていくサスペンス作品として非常にスリリングでした。冒頭の“すれ違いと誤認”から始まる展開はショッキングで、その後も誰が加害者で誰が被害者なのか、読み進めるたびに立場が入れ替わる構成が印象的です。
特に、ラッセルによる執念深い復讐劇が物語の軸となり、登場人物全員が翻弄されていく様子には不気味さと緊張感が常に付きまといます。一見すると浮気劇のもつれのようですが、電話による指示、脅迫、人質、薬物、偽装工作などが次々に絡まり、一つひとつの行動の裏に意図が隠されているのが面白さにつながっていました。
中盤以降の展開では、どこまでが仕組まれていたのか、誰が本当の黒幕なのかという疑心暗鬼が強まり、読者側も登場人物と同じように“真実がどこにあるのか分からない”状態に置かれます。さらに終盤でラッセルが死を迎えることで、物語が終息に向かうかと思いきや、新たな視点と脅威がそこから立ち上がる展開には驚かされました。
ラストの部屋「513」での真相パートも見どころで、それまで外側からのみ監視されていたと思わせておきながら、実はさらにその構造ごと俯瞰されていたという不気味さがあります。リディアの関与が明らかになるくだりも、単なる“被害者の妻”では済まされない狂気があり、物語にもう一段階の深みを与えています。
最終的に誰が正しいのか、誰が悪なのかを一言で割り切れない後味の悪さと、人間関係のもろさ・復讐心の連鎖・愛憎の歪みといったテーマが強く残る作品でした。救いのない結末でありながら、最後まで緊張を切らずに読ませる構成力があり、登場人物たちの選択や裏切りの積み重ねが濃密なサスペンスとして成立しています。
全体として、極限状況における人間の本性と、仕掛けられた復讐劇の残酷さを描いた、後味の重いサイコスリラーとして印象に残る物語でした。
まとめ
『ホステル ネクスト・レベル』は、過激な拷問描写や権力と快楽が交錯する世界観をさらに深化させたスプラッター・スリラーです。表向きの娯楽ではなく、“人間の闇”や“支配欲・金欲・命の価値”というテーマを極端な形で描き出しています。シリーズを観てきた人にとっては、過去作との繋がりや進化したシステムも興味深く、新規の視聴者にも独立した作品として理解しやすい構成になっています。
グロテスクな描写や倫理的にギリギリの展開が多いため、好みは分かれるものの、「ここまで突き抜けたホラーを観たい」「人間心理の底辺を覗きたい」という層には強く刺さる内容です。サバイバル要素、復讐劇、支配構造、そして不条理なラストなど、多面的な見どころが詰め込まれており、観賞後にも考察の余地を残すタイプの作品と言えます。
過激ホラーファンやシリーズ追跡者には必見の一本でした。
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