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30代後半、中年ひきこもり男性の赤裸々な実態、諸星ノア『ひきこもりセキラララ』感想

諸星ノア『ひきこもりセキラララ』という本を読んだ。30代後半のひきこもり中年男性のエッセイのような本。

著者は大学卒業後からひきこもり、30歳でいったん就職したものの仕事が続かず、その後はずっとひきこもりの生活をしているようだ。

中年のひきこもり男性の生活実態や考え方などがわかり、またいろいろと共感できるところも多く面白かった。

以下興味深かった点をいくつか抜粋

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他人との交流は二日おきくらいがちょうどいい

著者は周りのペースに合わせるのが苦手であり、1人の時間が必ず必要とのこと。これはとても共感できる。おそらく内向的な人の特徴だと思う。

周りのペースに合わせるのが苦手である。心のペースを乱されるのが、いやである。あまりに周りのペースに合わせていると、自分の大切な時間を他人に侵され、犠牲にされているきがしてならない。自分の心が消耗させられている感覚を覚える。

だから一日のうちの大半の時間を他人と過ごすのには、とても抵抗があり、強いストレスを感じる。例えるなら自分のペースで走れないマラソンといった感じか。息継ぎをしない水泳にも似ている。それが月曜から土曜まで続くのでは、たまらない。一日二十四時間のうち、人との交流時間は、のべ四時間くらいでいい。他人との交流は、二日おきくらいが自分にはちょうどいい気がする。

「父親との葛藤、「相田みつを」責め」

著者の父親は常識を振り回す人間で、父親との関係は子どもの頃からずっと悪かったようだ。

特に面白いと思ったのは、父親が「相田みつを」の言葉を借りてひきこもりの著者へメッセージを送ってくるところ。著者はそれを「相田みつを責め」と表現している。

”常識責め”に加えてここと数年で加わった父の責め苦に、”相田みつを責め”がある。名称は私が心の中で勝手につけたものだ。父はあの”にんげんだもの”の相田みつをが好きらしい。それで相田みつをの言葉が入った日めくりカレンダーを、洗面所やトイレのドアの内側に掛けている。

その言葉の選び方が、どうも私に向けられているフシがある。父が私に言いたいことを、相田みつをの言葉から探して選んでめくっているようなのである。例えば先日洗面台に立ったら、”考えてばかりいると日がくれちゃうよ”とあった。部屋にこもって考えてないで、早く働きに出ろということだろう。

「相田みつを」の言葉は、普通はポジティブなものとして受け取られることが多いが、ひきこもりの人にとっては、自分が責められているようにように思えるのかもしれない。

「物が心配で実家を出れない」

少し不思議に思ったのは、著者は父親と仲が悪いにもかかわらず、実家を出ることがない点。著者は家庭内暴力に対する不安も書いていて、深刻な事態(警察沙汰など)に発展する可能性も危惧している。父親も著者に1人暮らしをすすめたことがあったそう。

しかし著者によると、部屋には大切な物(漫画やビデオなど?)が(おそらく持ち出せないくらい)たくさんあり、もし一人暮らしをしたら父親に処分されてしまうのではないかと心配であり、それで実家から出ることができないとのこと。「物」が著者の大きな心の支えになっているようだ。この点はオタク的な人と共通点があるのかなと少し思った。

「著者の絵はプロ級」

著者はずっと漫画家を目指しているようで、本書でもイラストや漫画がいくつかのっている。これを見る限りプロとしても十分やっていけそうなくらい上手だと思う。実際絵の仕事もされているようだ。

著者の漫画やイラストが楽しめるのも本書の魅力の一つだと思う。


ひきこもりセキラララ

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