鴻巣友季子『翻訳教室―はじめの一歩 (ちくまプリマー新書)』という本を読んでいたら、面白い翻訳例がありました。
あるとき、十五歳と二十歳くらいのアメリカ人の兄弟がいて、お兄さんがベトナム戦争に出兵していく。その時の別れの言葉として、
「I love you,I love you, brother」
って弟が叫ぶ場面がありました。これはなんて訳したらいいでしょう。
普通に考えたら「I love you,I love you, brother」は「お兄ちゃん愛しているよ」みたいな訳になると思いますが、これを鴻巣さんは「兄貴、死ぬんじゃないぞ」と訳したそうです。
翻訳って翻訳者の解釈がかなり入っているもなんですね・・・。夏目漱石が「I love you」を「月がきれいですね」と訳したという話もありますしね。
ここらへんは人間の想像力のなせるわざという感じもします。人工知能が発達してもなかなか難しい部分ではないでしょうか。
この本はNHKの「課外授業 ようこそ先輩」という番組で、小学生に対する翻訳の授業の内容を下敷きにしたものです。翻訳の細かいテクニックではなく、翻訳についての基本的な考え方などが書かれています。