『洞窟オジさん』という本を読んだ。
洞窟で43年間暮らしたという男性の自伝。
オジさんは小さい時に親から虐待を受けて家出し、それから洞窟に住み始めたとのこと。それ以来43年にわたって洞窟で暮らしたそう。
まず、戦後の日本でそんな人がいたのかと、信じられない気持ちになる。
また、俗世間から離れたい大人などではなく、子どものころからなので、それもすごいと思う。
洞窟は住みやすい?
洞窟自体は人間が住むのに向く天然の住居のようだ。
以前、中国の四川省で洞窟に暮らす家族の話を新聞か何かで読んだことがある。洞窟は夏は涼しく冬は暖かいそうだ。
また、古代の洞窟の壁画が発見される例から見ても、洞窟には古くから人類が住んでいたのかもしれない。もしかしたら、人類の歴史から考えると、洞窟に住んでいた歴史のほうが長いのかもしれない。
もし住む場所を失ったら洞窟に住むのも良いのかもしれない。
「驚異的なサバイバル能力」
一方で、このオジさんのサバイバル能力もすごいと思う。
大した道具を持たないのに(おそらくナイフとライターくらい)、野生の動物を捕まえて解体したり、自然の植物を採取して食料にしている。さらに、病気になると自分で天然の薬を作っている。
これは親と住んでいた頃に身に付けた知識のようだ。しかし、おそらく普通の人は難しいだろう。
「1万円を使うとお金が増える」
洞窟おじさんの「お金」に関するエピソードも面白い。
おじさんはずっと洞窟にすんでいたので、お金のシステムもよくわかっていなかったようだ。すべて自給自足で暮らしていたので、お金を使ったことがなかったからだ。
ある時、1万円で買い物をしたところ、お金がたくさん増えて戻ってきたため、おじさんはとても喜んだという。
「自然と虐待のサバイバー」
オジさんは現在社会復帰し、普通に仕事をして普通の家に住んでいるようだ。
この本は、過酷な自然環境を生き抜いた「サバイバー」の話としても読めるし、他方で、家族の虐待を生き抜いた<サバイバー>の話としても読める。少し不思議な本だと思った。
オジサンのユニークな人生は単純に面白いが、そこには暗い虐待の影もあり素直に楽しむのは少しためらってしまうような、そんな複雑な気持ちにもなった。