教員の女性(黒木華)がSNSで知り合った男性と結婚しますが、離婚して家を失い、家政婦としてAV女優(Cocco)の家で働くという話です。
岩井俊二監督の作品です。とても面白いのでおすすめです。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』のあらすじ
派遣教員の皆川七海(黒木華)は、SNSで知り合った鉄也(地曵豪)という男性と結婚します。
しかし、七海は鉄也の母親から浮気を疑われ、離婚せざるをえなくなります。
一方的に家を追い出された七海は、すべてを失い、あてもなく東京の街をさまよいます。その後、七海はたどりついたホテルで掃除の仕事を始めます。
それから、七海はバイトで里中真白(Cocco)という女性と知り合い、仲良くなります。そして、真白と一緒に住み込みのメイドの仕事を始めます。
しかし、ほどなくして真白の体に異変が現れます・・・。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』のキャスト
- 皆川七海(派遣教員の女性)/ 黒木華
- 安室行舛(何でも屋で七海のSNS友だち) /綾野剛
- 里中真白(AV女優) / Cocco
- 鶴岡鉄也(七海の結婚相手。学校の教師) / 地曵豪
- 鶴岡カヤ子(鉄也の母親)/ 原日出子
- 高嶋優人(不倫を偽装する男性)/ 和田聰宏
- 皆川博徳(七海の父) / 金田明夫
- 皆川晴海(七海の母) / 毬谷友子
- 恒吉冴子(真白の友だちのAV女優)夏目ナナ
- 里中珠代 (真白の母)りりィ
『リップヴァンウィンクルの花嫁』の監督
監督は岩井俊二さんです。テレビドラマ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』や、映画『Love Letter』『スワロウテイル』などを監督しています。
リップヴァンウィンクルとは?
題名にある『リップヴァンウィンクル』は、アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングによる短編小説です。
猟に出た主人公リップが山中で奇妙なオランダ人に酒をふるまわれて寝込んでしまい、目を覚まして山を下りると20年も経っていて、世の中がすっかり変わってしまっていたという話です。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』の感想
教員のエピソードがリアル
教員のエピソードがとてもリアルです。
七海は大学の教育学部を卒業し、派遣で教員をしています。おとなしいせいか生徒からは馬鹿にされています。
ある時、七海が教室に入ると教壇の上にマイクが置かれています。七海がびっくりしてマイクを見ていると、生徒の一人に「先生の声小さいから、次からはこれを使って話してください」と言われます。
七海は断れず、言われた通りマイクで話を始めます。生徒からは「本当に使っているよ」とクスクス笑われてしまいます・・。
結局この出来事がきっかけで、七海は派遣の契約を切られてしまいます。
レールから外れ、堕ちていく様子が悲惨
七海が人生のレールから外れ、一気に堕ちていく様子が悲惨です。
七海は大学の教育学部を卒業して教員になり、結婚してからは仕事を辞めて専業主婦になります。いわばレールに沿った生き方をしています。
しかし、そんな生活がある日突然壊されてしまいます。相手の母親から不倫を疑われ離婚することになるのです。
七海は家を追い出され、何もかもを失います。突然レールから外れることを強いられるのです。半泣きになりながら、大きなトランクをゴロゴロさせて東京の街をさまよう様子は非常に印象的です。
堕ちているのか昇っているのか
その一方で、最後のシーンを見ると、ただ堕ちているとだけでは言い表せないような、違った印象も持ちます。
最後のシーンでは、七海が新しいアパートを見つけ、部屋でほっとしている場面があります。これは、七海がどこか解放されたようにも見えるのです。
岩井俊二監督のインタビューでも、監督はそのようなことを指摘しています。
一見すると七海にとってはどんどん堕ちていく話なんですけど、堕ちているように見えて実は昇っているような、そういう話がつくれないかなと思っていました。社会のヒエラルキーを堕ちていく話というのは、往々にして非常に失礼なことになるんです。この前までお屋敷に住んでいた人が長屋住まいになるくらい落ちぶれてしまった、というような。堕ちた先にも人は住んでいるし、その人たちなりの生活があるわけじゃないですか。「長屋の人たちがそんなに悪いのかよ」っていうことにもなるし(笑)。この社会から堕ちることは、実は解放されることだったり、堕ちているように見えて逆に伸びあがっていくことなんじゃないか。そういうことを描けたら、とは思っていました。
堕ちているのか昇っているのか、それは誰にもわからないのかもしれません。
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